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コラム

SIM熊本2030体験記

2015年12月16日(水) [三菱総合研究所 研修研究員(派遣元:埼玉県)広瀬 学]

一般社団法人オープン&ビッグデータ活用・地方創生推進機構(VLED)の
自治体職員向け研修プログラムとして実施されたSIM熊本2030を体験してきました。

SIM熊本2030とは、熊本県庁職員の自主活動グループ「くまもとSMILEネット」が
開発した2030年問題を体感する「対話型自治体経営シュミレーションゲーム」です。

ゲームは、1チーム6人で構成され、
それぞれが架空の市の部長に任命されることから始まります。
今後、自治体が直面することとなる人口減少による税収減と
高齢化の進展による社会保障費の増大やその時々に起こる問題に対応していくため、
事業の削減を迫られます。
やみくもに廃止する事業を選択することは許されず、
各部長が限られた時間の中で話し合い、議会や市民に対し、
削減する事業の影響からその対応策についてまで、
丁寧に説明することが求められます。
納得して頂くことができなければ、公債を発行することとなり、
積み重なれば財政破綻になってしまいます。

このSIM2030を体験することにより、日々の業務に追われ、市(県)全体を見通し、
意識しながら、業務を行うことがなかったことを実感しました。
また、予算についても、要求した予算が削られないように
財政担当課に説明をしていくことのみを意識し、
全体の中での優先順位など考えたことなどありませんでした。
これは、私に限った話ではなく、多くの自治体職員が同じなのではないでしょうか。

社会のニーズが多様化する中で、すべてのニーズに対応していくことは困難であり、
今後より限られた財源の中で、投資していく事業を判断していく必要に迫れます。
そのような中で、担当部局のことだけではなく、
市(県)として何を「売り」としていくべきかについて部局をまたいで議論し、
重点的に投資していくべき分野を決め、場合によっては担当部局の事業を
自ら削減するような自治体運営が行われるようになる。
将来を予言するようなゲームを体感することにより、
幅広い視野を持ち、将来を想像することの必要性及び世の中の変化を
敏感にとらえ、変化に対応することの大切さを体感しました。
このことは、過疎化が進む自治体に限ったことではなく、
すべての自治体が直面する将来であるので、
都市部の自治体だからと他人事でいられることではありません。
自治体職員であれば、皆考えていかなければならない課題なのです。

SIM2030は、誰でも気軽に参加することのできるものでありながら、
一度ゲームが始まると、チーム一丸となり、目の前の課題について話合い、
限られた時間の中で1つの答えを出していくことになるので
あっという間に時間が過ぎていきます。
時間を止めて冷静に考えたいと思っても待ってはくれません。
多数決というような安易な選択は許されず、
チームで知識、アイデアを出し合い、想像力を働かせ、
チームとして判断を決めた上で、外部に対しどうわかりやすく説明していくかまで
検討していかなければなりません。
このように議論ですべてを決めていく経験に慣れていなかったので、
研修が終わるころには疲れ果てていました。
また、チームで決めた判断についても、その場しのぎの答えではなく、
明確な将来像を持ち判断を行っているかが求められます。
取り組みやすいゲームですが、とても奥が深く
学ぶものが多い充実した内容となっています。

「くまもとSMILEネット」のメンバーの方が
「SIM2030を体験した後の気づきは一人一人違うし、
体験して後日気が付くようなこともある」とおっしゃっていました。
それだけSIM2030から学ぶことは多いということであると思います。
私もまだこれから新しい気づきがあるかもしれません。
今後ますますSIM2030が広まり、まだ体験していない方が、
新しい「気づき」に触れることを望みます

最後に、業務多忙の中、このような素晴らしいゲームを開発してくださった
「くまもとSMILEネット」の皆様に御礼申し上げます。

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